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MEGANEROCKの製作技法について【芯張り】

MEGANEROCKの製作技法について【芯張り】

前回の記事で、「芯張り」について言及しました。現在ではほとんど使われていないこの技法。今回はこの技法について、簡単に説明をしたいと思います。

現在、アセテート素材で作られる眼鏡のテンプルのほとんどには、強度を保つための金属の芯が入っています。この芯を入れる方法のうち、主流になっているのは「シューティング」と呼ばれる技法です。テンプルに加工する前の細長いアセテートの棒に、機械で芯を打ち込む方法です。こちらは効率的な生産、量産が可能であり、現在の芯金の打ち込み方法には、ほとんどこちらが採用されています。


【シューティングによる芯金】

一方、MEGANEROCKでは前述の「芯張り」を採用しています。これは、テンプル部分の元となるアセテート素材の生地を、生地→金属の芯→生地の順に貼り合わせ、熱と圧力で接着させ一本の棒とします。セルロイド素材でのメガネ製作が主流で、今ほど技術が進歩していなかった時代の技法です。しかし、アセテート素材でのメガネ製作が主流となっている現在、この技法で製作されるメガネは希少になってきています。セルロイドよりも貼り合わせるのが難しい上に、シューティングと比較してロスも出やすい技法ゆえ、技術的、効率的観点から時代の流れとともに淘汰されつつあります。
しかし、芯張りにすることで生じるメリットがあり、MEGANEROCKならではのこだわりを実現するためには、シューティングではなく芯張りが適していました。

MEGANEROCKでは、眼鏡のフロントとテンプルを繋ぐための技法も、フロント部分へ熱によって埋め込む「座掘り」ではなく、鋲を打ち込む「カシメ」にこだわっています。これは強度向上はもちろん、セルロイド製のヴィンテージ眼鏡にもみられる古くからの技術であるカシメを、現代のアセテート製眼鏡へも活かすためのこだわりです。


【座掘りによる結合】

そのために芯金のフロント側部分もカタカナの「コ」の字型の特別製のものになっています。一般的な眼鏡は芯金に「洋白」という合金を使用しています。洋白は楽器や装飾品などに用いられ、美しい光沢がある合金です。一方、MEGANEROCKではより強度のあるチタンを使用しています。合金の場合は、芯金を貫通させてカシメることが可能ですが、チタンはその強度のために芯金を貫通させることが難しく、このように芯金の一部を特別なものに加工する処理が必要になるのです。
また、芯張りにすることによって、アセテートの生地の内側に来る部分をクリアなものにできるので、「MEGANEROCK VECTOR」の象徴的なVECTOR(矢印)を可視化することができ、デザイン面でのメリットも最大限活かしています。


【MEGANEROCKのカシメおよび芯金】


【MEGANEROCKのテンプル部分】


【VECTORシリーズの芯金】

また、アセテートは経年変化でわずかに収縮してしまう素材なのですが、収縮に耐えられるよう、芯金の長さをわずかに短く調整するなど、一般的な見方ではわからない、気づかない範囲への細やかな気配りも垣間見えます。芯張りの、アセテートの間に芯金を挟み込むという手間のかかる工程が、これらを可能にしています。

現在、MEGANEROCKでは芯張りのテンプル部分のみを鯖江にいる数少ない職人に依頼しています。この失われつつある技術を、雨田さんは後世に残していきたいと考えておられます。

雨田さんや、鯖江の職人さんの技術やこだわりだけでなく、それにかける熱意なども感じていただければと思います。

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